「勤務間インターバル制度は努力義務だから、まだ様子見でいい」そう考えていないでしょうか。
しかし、長時間労働による健康障害が社会問題となる中で、企業にとって従業員の健康確保は重要な課題となっています。
勤務間インターバル制度は、単なる「休息時間のルール」ではなく、労働者の健康確保と企業の労務管理上のリスク低減を図るための仕組みです。
また、採用活動においても「働きやすさ」は重要な判断材料となっており、勤務間インターバル制度の導入は、企業の働き方に対する姿勢を示す一つの指標にもなります。
本記事では、勤務間インターバル制度の基本的な考え方や導入状況、企業が押さえておきたい実務上のポイントについて、わかりやすく解説します。
1 勤務間インターバル制度とは
勤務間インターバル制度とは、終業時刻から翌日の始業時刻までの間に、一定時間以上の休息時間を確保する制度です。
労働基準法では、原則として1日8時間、1週40時間という法定労働時間が定められており、36協定による時間外労働についても、原則として1か月45時間、1年360時間という上限規制があります。
しかし、終業時刻から翌日の始業時刻までに、何時間以上の休息を確保しなければならないという一般的な規制は設けられていません。
そのため、勤務間インターバル制度は、日々の勤務と勤務の間に一定の休息時間を確保し、労働者の健康を守るための仕組みといえます。
例えば、11時間の勤務間インターバルを設定している企業では、深夜23時まで勤務した場合、翌日の始業時刻は原則として10時以降となります。
なお、日本では、勤務間インターバル制度の導入は、労働時間等設定改善法第2条第1項により、事業主の努力義務とされています。
したがって、現時点ではすべての企業に導入が義務付けられているわけではなく、休息時間についても、法律上、一律に11時間などと定められているわけではありません。
2 導入状況
厚生労働省の「令和7年就労条件総合調査」によると、勤務間インターバル制度を導入している企業の割合は6.9%となっています。
前年の5.7%から増加しているものの、導入企業は1割にも満たず、十分に普及しているとはいえない状況です。
また、「導入を予定又は検討している」と回答した企業は13.8%である一方、「導入予定はなく、検討もしていない」と回答した企業は78.7%となっています。
このように、現時点では多くの企業が制度を導入していませんが、今後、長時間労働の是正や労働者の健康確保という観点から、制度への関心が高まることが考えられます。
【出典】:厚生労働省「令和7(2025)年就労条件総合調査の概況」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/itiran/roudou/jikan/syurou/25/dl/gaikyou.pdf
3 導入メリット
勤務間インターバル制度は、現在、努力義務とされていますが、導入することで次のようなメリットが期待できます。
(1)従業員の健康維持
仕事が終了してから翌日の仕事までの時間が短いと、十分な睡眠や休息を確保できず、疲労が蓄積するおそれがあります。
例えば、深夜23時まで勤務した翌日と、18時に勤務を終了した翌日では、翌朝までに確保できる休息時間に大きな差があります。
勤務間インターバル制度により、翌日の始業時刻を繰り下げるなどして一定の休息時間を確保することで、疲労の回復を促し、従業員の健康維持につながることが期待できます。
また、睡眠不足や疲労の蓄積は、業務中の集中力の低下や事故の原因にもなり得ることから、労働災害のリスク低減という観点からも有効な取組といえます。
(2)従業員の確保
現在、多くの企業が人材確保に悩まされています。
求職者が就職先を選ぶ際には、賃金や休日数だけでなく、働きやすい職場環境が整備されているかどうかも重要な判断材料となります。
勤務間インターバル制度を導入することで、「従業員の健康や働き方に配慮している企業」という印象につながり、採用活動において有利に働くことが期待できます。
また、既存の従業員にとっても、十分な休息時間を確保できる職場環境は、働き続けるうえでの安心感につながり、離職防止にも寄与する可能性があります。
4 今後の動向と企業が押さえるべき実務ポイント
勤務間インターバル制度は、現在、事業主の努力義務とされており、すべての企業に導入が義務付けられているわけではありません。
もっとも、労働者の健康確保や長時間労働の是正は重要な政策課題であり、勤務間インターバル制度についても、今後の制度の在り方が検討されています。
企業としては、法改正の動向を確認するとともに、自社の勤務実態を踏まえ、導入の必要性について検討しておくことが望ましいでしょう。
実際に制度を導入する場合には、特に次の点に注意が必要です。
(1)休息時間の設定
まず、終業時刻から翌日の始業時刻までに確保する休息時間を決める必要があります。
勤務間インターバルの時間数について、法律上の一律の基準はありませんが、9時間や11時間などを設定する方法が考えられます。
企業の業種や勤務形態、時間外労働の実態などを踏まえて検討することが重要です。
(2)翌日の始業時刻の取扱い
勤務間インターバル制度を導入した場合、前日の勤務が長引いたことによって、翌日の所定の始業時刻までに必要な休息時間を確保できないことがあります。
このような場合に、翌日の始業時刻を繰り下げるのか、あるいは別の方法で対応するのかを、あらかじめ決めておく必要があります。
(3)賃金の取扱い
始業時刻を繰り下げる場合には、その時間について賃金を支払うのかどうかも検討する必要があります。
勤務間インターバル制度の導入に伴う賃金の取扱いについて、あらかじめルールを明確にしておかなければ、従業員とのトラブルにつながるおそれがあります。
(4)就業規則への規定
勤務間インターバル制度を導入する場合には、対象となる従業員の範囲、休息時間、始業時刻の取扱い、例外的な対応などについて、就業規則等に明確に定めておくことが重要です。
特に、深夜勤務や突発的な業務が発生する企業では、実際の勤務状況を踏まえた制度設計が求められます。
制度を設けるだけでなく、実際に休息時間を確保できるよう、適切な労働時間管理を行うことが重要です。
5 まとめ
勤務間インターバル制度について解説しました。
現 時点では努力義務とされていますが、労働者の健康確保や長時間労働によるリスクの低減を図るうえで、重要な取組の一つといえます。
また、導入に当たっては、休息時間の設定だけでなく、始業時刻や賃金の取扱い、就業規則の整備など、実務上の検討も必要となります。
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