「問題社員を即日で辞めさせた」「もう来なくていい、と伝えただけ」といったケースがありますが、実は、解雇予告手当の未払いによって労働基準監督署から是正勧告を受けるケースがあります。
解雇については、法律上、様々な規制が設けられていますが、その中の一つが「解雇予告制度」です。
本記事では、解雇予告制度の基本的な仕組みや注意点について、わかりやすく解説します。
1 解雇とは
退職について、一般的なケースとしては、従業員が「退職します」と申し出て、会社が「わかりました」と承認し、退職日に至るものがあります。
一方で、解雇とは、会社が一方的な意思表示によって労働契約を終了させることをいいます。従業員の同意を必要とせず、会社の判断によって行われるものです。
解雇は、従業員の生活に大きな影響を及ぼすことから、法律上、様々な規制が設けられています。
その中の一つが、解雇予告制度です。
2 解雇の手続き
労働基準法第20条では、従業員を解雇する場合、原則として以下のいずれかの手続きが必要とされています。
(1)解雇予告をする場合
少なくとも30日前に解雇の予告をする。
(2)解雇予告をしない場合
30日分以上の平均賃金(解雇予告手当)を、解雇と同時に支払う。
(1)について、例えば、12月31日付けで解雇する場合、遅くとも12月1日に解雇予告(解雇する旨の申し渡し)を行う必要があります。
解雇予告をした当日は予告日数に算入されませんので、12月2日を初日として、12月31日までの30日間が必要となります。
なお、この30日間は暦日で計算するため、土日祝日などの休日も含まれます。
また、解雇予告と解雇予告手当を組み合わせることも可能です。
例えば、解雇予告期間が15日しかない場合には、不足する15日分の平均賃金を解雇予告手当として支払うことで対応できます。
解雇予告手当の支払時期にも注意が必要です。即時解雇の場合は解雇の申し渡しと同時に、解雇予告と解雇予告手当を組み合わせる場合には、遅くとも解雇日までに支払う必要があります。
解雇される場合、従業員は転職や今後の生活について考える必要があります。解雇予告制度は、突然の解雇による生活への影響を緩和するために設けられた制度といえます。
3 解雇予告制度の適用除外
原則として、従業員を解雇する場合には、解雇予告又は解雇予告手当の支払いが必要ですが、労働基準法第21条では、以下の従業員について適用が除外されています。
(1)日々雇い入れられる者
ただし、1か月を超えて引き続き使用されるに至った場合には、解雇予告制度が適用されます。
(2)2か月以内の期間を定めて使用される者
ただし、所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合には、解雇予告制度が適用されます。
(3)季節的業務に4か月以内の期間を定めて使用される者
ただし、所定の期間を超えて引き続き使用されるに至った場合には、解雇予告制度が適用されます。
(4)試用期間中の者
ただし、14日を超えて引き続き使用されるに至った場合には、解雇予告制度が適用されます。
特に注意が必要なのは、試用期間中の従業員です。
例えば、就業規則で試用期間を3か月と定めていたとしても、14日を超えて引き続き使用された場合には、原則として解雇予告又は解雇予告手当の支払いが必要になります。
なお、これらはあくまでも解雇予告制度の適用が除外されるという意味であり、自由に解雇できるということではありません。
4 解雇予告除外認定について
原則として、従業員を解雇する場合には、解雇予告又は解雇予告手当の支払いが必要です。
しかし、労働基準法第20条第1項ただし書では、一定の場合に解雇予告制度の適用が除外されることが定められています。
具体的には、次の2つの場合です。
(1)天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合
例えば、地震などの天災によって事業場が倒壊し、事業を継続することが不可能となった場合などが考えられます。
ただし、単に経営状況が悪化したことや、業績不振により事業を廃止することなどは、原則として該当しません。
(2)従業員の責めに帰すべき事由に基づいて解雇する場合
従業員の行為が、解雇予告による保護を与える必要がない程度に重大又は悪質である場合をいいます。
例えば、事業場内における窃盗や横領、採用条件の重要な要素となる経歴の詐称などが考えられます。
ただし、これらに該当するかどうかは、個別の事情を踏まえて判断されます。
また、会社が就業規則に基づき懲戒解雇と判断したからといって、当然に解雇予告が不要になるわけではありません。
これらの事由によって解雇予告又は解雇予告手当の支払いを省略するためには、原則として、あらかじめ所轄の労働基準監督署長による解雇予告除外認定を受ける必要があります。
認定に当たっては、従業員の行為の内容や悪質性などを踏まえて判断され、会社の判断がそのまま認められるわけではありません。
そのため、解雇予告除外認定の申請を検討する場合には、事前に管轄の労働基準監督署へ相談しておくことが望ましいでしょう。
5 解雇予告をすれば解雇が有効になるわけではない
ここまで解雇予告について解説しましたが、注意しなければならないのは、「解雇予告(又は解雇予告手当の支払い)をした=解雇が有効」ということにはならない点です。
労働契約法第16条では、次のように定められています。
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」
つまり、解雇予告の手続きを適切に行ったとしても、解雇の理由や内容に合理性・相当性がなければ、その解雇は無効となる可能性があります。
例えば、従業員が1回遅刻したことを理由に解雇する場合、30日前に解雇予告を行ったとしても、それだけで解雇が有効になるわけではありません。
また、有期労働契約については、労働契約法第17条第1項により、やむを得ない事由がある場合でなければ、契約期間の途中で解雇することはできないとされています。
このように、解雇については、解雇予告などの手続きが適切であるかという点と、解雇の理由や内容が妥当であるかという点を、両面から検討することが必要です。
6 まとめ
解雇予告制度について解説しました。
従業員を解雇する際には、原則として30日前の解雇予告又は解雇予告手当の支払いが必要です。
また、解雇予告の手続きを適切に行ったとしても、それだけで解雇が有効になるわけではありません。解雇の理由や必要性についても慎重に検討する必要があります。
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