年次有給休暇(以下「年休」といいます。)は、従業員が心身の疲労を回復し、ゆとりある生活を送るために設けられている制度です。
年休というと「1日休む」というイメージが一般的ですが、会社の制度によっては、半日単位や時間単位で取得することもできます。
一方で、1日単位、半日単位、時間単位では、それぞれの取扱いや導入方法が異なります。
本記事では、年休の取得方法について、1日単位・半日単位・時間単位の3つに分けて解説します。
1 1日単位で取得する方法
年次有給休暇は、原則として1日単位で取得する制度です。
例えば、月曜日から金曜日までが所定労働日(出勤日)となっている従業員が、水曜日について年休を取得した場合、その水曜日の1日について労働する義務が免除されます。
そのため、まずは「1日単位で取得することが原則」であることを押さえたうえで、例外的・補充的な取得方法として、半日単位や時間単位の年休を考えることになります。
また、通常の1日単位の年休を取得するために、労使協定を締結する必要はありません。
もっとも、従業員が指定した日に年休を取得することで「事業の正常な運営を妨げる場合」には、使用者が別の日に変更する時季変更権を行使できる場合があります。
ただし、単に「忙しいから」「人手が足りないから」といった理由だけで、会社が自由に年休取得を拒否できるわけではありません。
2 半日単位で取得する方法
会社によっては、
「午前中だけ休みたい」
「午後から年休を取りたい」
といった形で、半日単位の年休(半日有休)を認めている場合があります。
例えば、午前中を半日年休として取得し、午後から出勤するようなケースです。
半日単位の年休は法律上の原則ではない
注意したいのは、従業員が希望すれば当然に半日単位で年休を取得できるわけではないという点です。
年次有給休暇はあくまで1日単位での取得が原則であり、会社には、労働者から半日単位の年休取得を求められた場合に、必ず応じなければならない義務まではありません。
つまり、半日年休は、
「法律上当然に取得できる制度」ではなく、会社が制度として認めることで利用できる取得方法
また、半日単位の年休については、後述する時間単位年休とは異なり、労使協定を締結する必要はありません。
ただし、実際に制度を設ける場合には、トラブルを防ぐため、就業規則などで取扱いを明確にしておくことが重要です。
特に、「午前休・午後休の時間帯」について、明確にしておく必要があります。
例えば、9時~12時までが午前の勤務、13時~18時までが午後の勤務の場合、
9時~12時の3時間が午前年休、13時~18時までの5時間が午後年休となることが一般的です。
この場合、同じ半日でも、午前と午後で時間数が違うこととなり、午後年休の取得が多くなる可能性があります。制度設計をあらかじめ整理しておくことが重要です。
3 時間単位で取得する方法
年休をさらに細かく取得できる制度が、時間単位年休です。
例えば、
- 病院への通院のため2時間だけ休む
- 子どもの学校行事のため3時間休む
- 私用のため1時間早く退社する
といった利用方法が考えられます。
働き方が多様化する中では、1日休むほどではないものの、数時間だけ仕事を離れたいというケースも少なくありません。
このような場合に利用しやすいのが時間単位年休です。
時間単位年休は年5日分まで
時間単位年休については、労働基準法第39条第4項により、年5日分までとされています。
つまり、年休を20日持っている従業員であっても、その20日すべてを時間単位で取得できるわけではありません。
時間単位として利用できるのは、最大5日分です。
例えば、時間単位年休における1日分を8時間としている会社であれば、最大40時間分を時間単位年休として利用することになります。
時間単位年休を導入するには労使協定が必要
半日年休との大きな違いがここです。
時間単位年休を導入するためには、会社と労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の過半数代表者との間で書面による労使協定を締結する必要があります。
労使協定では、主に次の4点を定めます。
- 時間単位年休の対象となる労働者の範囲
- 時間単位年休として取得できる日数(年5日以内)
- 時間単位年休1日分に相当する時間数
- 1時間以外を取得単位とする場合の時間数
なお、この労使協定については、労働基準監督署へ届け出る必要はありません。
時間単位年休は「1時間以上」が基本
時間単位年休という名前のとおり、取得単位は「時間」です。
そのため、
「30分だけ有給にする」
「15分単位で年休を使う」
といった1時間未満の単位で取得することはできません。
労使協定によって、1時間単位だけでなく、2時間単位や3時間単位などとすることもできます。
ただし、1日の所定労働時間を超える時間数を取得単位とすることはできません。
1日の所定労働時間に端数がある場合
例えば、1日の所定労働時間が7時間30分の場合、時間単位年休における1日分を「7時間30分」とするわけではありません。
1時間未満の端数については切り上げるため、この場合は8時間を1日分として取り扱います。
所定労働時間が7時間45分の場合も同様に8時間です。
時間単位年休を導入する会社では、この「1日分を何時間として扱うか」を明確にしておく必要があります。
時間単位年休は年5日の取得義務にカウントできない
実務上、特に注意したいのがこの点です。
年10日以上の年次有給休暇が付与される従業員については、会社には年5日の年休を確実に取得させる義務があります。
しかし、従業員が時間単位年休を取得した時間については、この年5日の取得義務の日数に算入することができません。
例えば、
「時間単位年休を合計40時間取ったから、年休を5日取得したことにする」
という取扱いはできません。
時間単位年休を多く利用している労働者については、別途、1日単位や半日単位で年5日の取得状況を確認する必要があります。
4 まとめ
年次有給休暇は、1日単位で取得することが原則です。
そのうえで、会社が半日単位の年休制度を設ければ、午前休や午後休として利用することもできます。
また、労使協定を締結することにより、年5日分を上限として時間単位年休を導入することも可能です。
それぞれを整理すると、
- 1日単位:年休取得の原則
- 半日単位:従業員が希望し、会社が制度を設けていれば取得可能
- 時間単位:労使協定を締結し、年5日分まで取得可能
という違いがあります。
特に時間単位年休については、単に就業規則に「時間単位で取得できる」と記載するだけでは足りず、労使協定の締結や取得単位などの制度設計が必要です。
また、時間単位年休を取得しても、会社に義務付けられている「年5日の年休取得」には算入されない点にも注意が必要です。
年休制度を導入・見直しする際には、従業員の利便性だけでなく、労働基準法上のルールを確認したうえで、就業規則や労使協定の内容を整備することが重要です。

