年次有給休暇とは別に、病気休暇や慶弔休暇、リフレッシュ休暇などの「特別休暇」を設けている企業があります。
特別休暇は、従業員が病気の治療や家族の慶弔、社会貢献活動など、さまざまな事情に対応しながら働き続けるための制度として活用できます。
一方で、「特別休暇は法律上必ず設けなければならないのか」「有給にしなければならないのか」「就業規則にはどのように定めればよいのか」といった点で迷う企業も少なくありません。
本記事では、特別休暇とは何か、代表的な種類、有給・無給の考え方、就業規則を作成する際のポイントについて解説します。
1 特別休暇とは
一般に「特別休暇」とは、年次有給休暇など法律によって付与が義務付けられている休暇とは別に、企業が任意に設ける法定外の休暇をいいます。病気休暇、ボランティア休暇、リフレッシュ休暇などが代表例です。
ここで注意したいのが、法律上取得が保障されている休暇・休業とは区別する必要があるという点です。
例えば、年次有給休暇、生理休暇、育児休業、介護休業、子の看護等休暇などは、一定の要件を満たした場合に法律上認められる制度です。一方、会社独自の病気休暇、慶弔休暇、リフレッシュ休暇などは、原則として企業が制度の有無や内容を決めることができます。
したがって、特別休暇については、付与日数、対象者、取得要件、有給・無給、申請方法などを企業の実情に応じて設計できます。
ただし、いったん就業規則などで制度を定めた場合には、その規定に従って運用する必要があります。また、既存の特別休暇を廃止・縮小する場合には、就業規則の不利益変更の問題が生じることがあります。
2 特別休暇にはどのような種類がある?
特別休暇にはさまざまな種類があります。代表例を見てみましょう。
(1)病気休暇
私傷病による療養や通院などを目的として設ける休暇です。
年次有給休暇とは別に病気休暇を設けることで、従業員が年次有給休暇を使い切ることなく治療を受けられるようにすることができます。
日単位だけでなく、通院などを想定して時間単位や半日単位で取得できる制度にすることも考えられます。
病気休暇を有給とするか無給とするかについては、原則として会社が決めることができます。
(2)慶弔休暇
本人の結婚や家族の死亡など、慶弔事由が生じた場合に取得できる休暇です。
例えば、
「本人の結婚 5日」
「配偶者の死亡 5日」
「父母の死亡 3日」
など、対象となる親族や取得日数を会社が定めます。
慶弔休暇についても法律上必ず設けなければならない制度ではなく、有給とするか無給とするかも企業が定めることができます。
(3)ボランティア休暇
災害支援や地域活動などの社会貢献活動を行うために設ける休暇です。
(4)リフレッシュ休暇
一定の勤続年数などを条件として付与する休暇です。
例えば「勤続5年で3日」「勤続10年で5日」といった制度設計が考えられます。
(5)裁判員休暇
裁判員や裁判員候補者として裁判所に出頭する際の休暇です。
ここは、他の特別休暇と少し性質が異なります。
労働基準法第7条では、労働者が「公の職務」を行うために必要な時間を請求した場合、使用者は原則としてこれを拒むことができないとされています。裁判員としての職務もこれに該当します。
したがって、会社に「裁判員休暇」という名称の制度を設けること自体は任意ですが、裁判員として必要な時間を与えないという運用はできません。
なお、その時間を有給にするか無給にするかについては企業の判断に委ねられています。
(6)不妊治療休暇
不妊治療の通院などを目的として設ける休暇です。
不妊治療休暇についても、法律上企業に制度の設置が義務付けられているわけではありません。
ただし、不妊治療では定期的な通院が必要になるケースもあるため、日単位だけでなく、半日・時間単位で取得できる制度にすることも考えられます。
厚生労働省も、不妊治療休暇について、性別や雇用形態にかかわらず利用できる制度とすることや、時間単位休暇など柔軟な制度設計を例示しています。
(7)その他の特別休暇
企業独自の制度として、誕生日休暇や記念日休暇を設ける例もあります。
3 特別休暇は有給?無給?
特別休暇についてよくある質問が、「特別休暇は給料を支払わなければならないのか」という点です。
会社独自に設ける特別休暇については、法律上必ず有給にしなければならないわけではありません。
例えば病気休暇について、
「年間5日まで有給」
「すべて無給」
「3日までは有給、それを超えた部分は無給」
などの制度設計が考えられます。
曖昧な運用を避けるためにも、「特別休暇○日」とだけ書くのではなく、その期間中の賃金を支払うのかどうかまで明記することが重要です。
4 特別休暇を導入する場合は就業規則に定める
特別休暇を導入する場合には、就業規則への規定も重要です。
労働基準法第89条では、「休暇」は就業規則の絶対的必要記載事項とされています。常時10人以上の労働者を使用する事業場では、就業規則を作成・届出する義務があります。
特別休暇を定める場合には、少なくとも対象者、取得事由、付与日数、取得単位、申請方法、有給・無給、未使用分の繰越の有無などを明確にしておくとよいでしょう。
特に「会社が必要と認めた場合」など会社側の裁量が大きすぎる規定にすると、実際の運用で従業員間に差が生じやすくなります。
できるだけ客観的な取得要件を定めておくことが重要です。
また、「いつまで利用可能か」についても、定めておくことが望ましいです。例えば、結婚休暇について、入籍日から10年後に利用したいと申し出があった場合、制度の趣旨にもよりますが、おそらく10年後の利用は想定していないものと考えられます。制度の趣旨から、「いつまでに利用してほしい」との目安はあるものと考えられますので、「いつまでに利用できるか」についても、定めておきましょう。
5 特別休暇と年5日の年次有給休暇取得義務は別
実務上、特に注意したいポイントです。
会社独自の特別休暇を取得させたとしても、年5日の年次有給休暇取得義務の日数に含めることはできません。
例えば、従業員が年間で「病気休暇3日+慶弔休暇2日」を取得していたとしても、それだけで年5日の年次有給休暇取得義務を満たすことにはなりません。
特別休暇と年次有給休暇は、別の制度として管理する必要があります。
6 病気休暇の就業規則規定例
例えば、病気休暇については次のような規定が考えられます。
(病気休暇)
第○条 従業員が業務外の傷病により療養する必要があり、就業することが困難である場合は、1年度につき○日を限度として病気休暇を取得することができる。2 病気休暇のうち年○日までは通常の賃金を支払い、それを超える日については無給とする。
3 連続して○日以上病気休暇を取得する場合、会社は医師の診断書その他療養の必要性を確認できる書類の提出を求めることがある。
4 病気休暇を取得しようとする者は、原則として事前に所定の方法により申請しなければならない。ただし、傷病その他やむを得ない事情により事前申請が困難な場合は、事後速やかに申請するものとする。
5 病気休暇は年次有給休暇とは別に付与し、未使用日数は翌年度に繰り越さない。
実際に制度を設計する際には、会社の規模、勤務形態、既存の休職制度、年次有給休暇制度などとの整合性も確認する必要があります。
7 まとめ
特別休暇は、年次有給休暇などの法定休暇とは異なり、企業が任意に設ける休暇制度です。
病気休暇、慶弔休暇、ボランティア休暇、リフレッシュ休暇など、会社の実情や従業員のニーズに合わせてさまざまな制度を設計できます。
一方で、制度を導入する場合には、単に「特別休暇を設ける」と定めるだけではなく、対象者、取得条件、日数、有給・無給、申請方法などを明確にしておくことが重要です。
また、裁判員として公の職務を行うために必要な時間など、法律上保護されている制度との違いにも注意する必要があります。
特別休暇は、適切に設計すれば、従業員の働きやすさの向上につながる制度です。
凪社会保険労務士事務所では、特別休暇制度の導入や就業規則の作成・見直しなど、企業の労務管理に関するご相談を承っています。

